心肺蘇生


 1.原点

昭和61年、島根県松江市。当時連戦連勝中の「日立」女子バレーボールチームに待ったをかけたのが、ハイマン選手を擁する「ダイエー」でした。チームの大黒柱であるハイマン選手のスパイクは「日立」のコートに炸裂。ベンチに一時下がったハイマン選手は、突然意識を失って倒れたのです。試合は中断されることもなく、担架が到着しハイマン選手が運び出される様子がテレビに映し出されました。「なぜ、日本では心肺蘇生を行わないのか?なぜ、監督・コーチは、タイムをかけないのか?選手の命より試合の方が大事なのか?」人の命はかけがいのないものです。助かる命・助からない命があると思います。助かる命は、全力で、みんなの力で助ける。これが、心肺蘇生の原点です。

 2.救命率

医学は飛躍的に進歩しています。特に循環器の分野での最先端医療の進歩は目を見張るようです。では、心肺停止に陥った患者さんが、救命されたかどうかの救命率を、救急救命士制度の出来た前後で比較してみるとどうでしょうか?1996年1月から3月までの心肺停止患者1300人を対象にしたデータによれば、社会復帰率は、わずかに「0.9%」です。また現状では、救急救命士の患者搬送時間には、一般の救急隊員の10分増であり、今後システムの検討が必要な時期に来ています。ところで、救急車が到着するまでに、何らかの蘇生処置が現場でなされている場合には、先ほどの社会復帰率は「2.1%」にまで、倍増します。救命率の現在の「カギ」は、現場での応急処置=心肺蘇生法にあるのです。

平成11年度統計で見る・・・西脇はどうか?

平成11年度救命率(全国統計)

( )内の数字は西脇市 ( )内の数字は西脇市
全国の救急隊が搬送した
全ての心肺停止傷病者数
83,353人(46)
家族などにより応急手当が
実施された傷病者数
19,212人・23%(7人・15%) 
左記の内、一ヶ月後の生存者数
861人・4.5%(0人・0%)
応急手当が実施されなかった
傷病者数
64,141人・77%(39人・85%)
左記の内、一ヶ月後の生存者数
1,807人・2.8%(0人・0%)

1996年(平成8年)よりも、応急手当の実施率は、全体の23%(平成8年は11%)と2倍以上に増えています。一ヶ月後の生存率は、やや増加したという程度です。一ヶ月後の生存者の約30%が「社会復帰」をされています。まだまだ不十分です。救命率を、なんとか10%にまでにしたいものです。また西脇市はと言えば、応急手当実施率も低く、平成11年度は、1人も残念ながら、救命されていません。頑張れ!

 3.シアトルに学べ

救急医療先進国アメリカのシアトル市は、心肺停止患者さんの「蘇生率」は、20〜30%です。高度先進医療の程度はあまり日本と変わりません。違いは「連絡が早い・まず救急隊が駆けつけるまでの数分の間に、応急手当が家族や友人などによってなされる」と言う点につきます。12才以上の市民のなんと60%以上の人々が「心肺蘇生法=応急手当」の訓練を受けているのです。あなたは、愛する人・家族・友人を助けることができますか?

 4.ドリンカー曲線


心配停止後、4分で50% 5分で25%の蘇生率。
時間がカギを握る。

心肺停止と心拍再開の関係「ドリンカー曲線」
何らかの原因で心肺が停止した場合。その時点で、脳への血流は停止します。少なくとも、4分で、脳細胞は壊死(細胞が死ぬ)します。西脇市の場合、119番通報後救急隊が現場に駆けつけるまでに6分弱かかります。その間、救急隊の到着のみを待つだけでは、患者さんに必要な脳血流の再開が時間遅れになってしまいます。救急隊の到着までの数分間こそが、友人・家族・愛する人を救う事のできる大事な時間なのです。この早期の心肺蘇生=応急手当が、心拍再開の「カギ」を握っています。ドリンカー曲線によれば、4分以上放置されれば、心拍再開の確率は激減します。繰り返します。救急隊を待っているだけでは、家族を救うことはできないのです。あなた自身が「応急手当」を行うしかないのです。

 5.命のリレー

アメリカ心臓病協会の提唱する「命のリレー」。どの鎖が欠けても、心肺停止の患者を助けることはできない。「早期の連絡」「早期の心肺蘇生」「早期の除細動」「早期の高度な医療」どれが欠けてもダメなのです。だからこその「命のリレー」なのです。


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